私の仕事は、紙を支持体とした資料の修復と保存のための
アドバイスをすることです。
資料を長く使えるようにすることが私の仕事です。
修復を行った後も長く利用できるように保存環境には
気をつけてくださいね、とお話しさせていただきます。
直しても保存環境が悪いとまたどこかに損傷が発生する
こともあります。
紙資料の劣化要因には、光(紫外線)とか汚染ガス(有機酸
の発生)などいろいろありますが、温度・湿度の影響はとても
大きいです。
図書など紙を支持体として使用している紙資料は、保存環境に
よって劣化の進行速度が異なります。
紙資料の保存には温度約20℃、湿度は50%から60%が適切である
と言われています。湿度が65%を超えた状態が長期間続くと使用
されている接着力が弱くなり、70%以上になるとカビの発生の
危険性が高くなります。
一方、低湿度の場合は40%以下の状態で維持すると、紙の乾燥が
著しくなり柔軟性を失い、紙の破れを引き起こしたり、使用され
ている色材の亀裂などを起こしたりします。
こうしたことから、空調設備を継続して使用できる図書館や文書館
などでは、この数値に設定されていることが多いと考えられます。
しかし、季節によっては空調により資料にとって悪い環境を作る
こともあります。例えば、冬は空気が乾燥しています。その外気を
そのまま空調装置により昇温し、室内に入ると極端な乾燥状態を
生じます。外気が10℃、相対湿度が40%の外気が、そのまま20℃に
暖房されたとすると相対湿度は23%程度まで下がります。
過乾燥な状態では上で説明したように紙の柔軟性がなくなり壊れや
すくなります。
そのため、空調設備が備えられている所でも温度・湿度の測定が必要
になります。とくに一日中空調が使用できない場合は、一日の温湿度
の変動にも注意する必要があります。資料の保存にとって温湿度の変化
は緩やかであることが推奨されています。±10 %の相対湿度の変動があ
ると資料に被害を生じると言われているためです。
長く資料を利用するためにも保存環境を整えることは重要になります。
定期的に点検をすることで現在適正な状況であれば、それを維持すること、
適正な状況でなければ原因を探り対処することができます。
本を楽しむためには本を守る環境も大事にしていきましょう。