Diario di Carta-Studio 小さな工房の日記

日々の出来事、作品作り、美術品修復に関することなどを綴ります

百万塔陀羅尼試し刷りをいただいた

先日、お会いした方からいただいたのが、

こちら

       ↓ ↓ ↓

「百万塔陀羅尼」の印刷の試し刷りとのこと。

名刺代わりに、とおっしゃっていたので、

かなりの数を刷ったのかな?と勝手に想像しています。

 

「百万塔陀羅尼」とは

百万塔は木製の三重小塔の内部に「無垢浄光大陀羅尼経」を

収めたもので、この経典の中の「自心印」、「根本」、「相輪」、

六度」を印刷しています。

塔の中の「陀羅尼経」は年代が明確な印刷物としては世界最古の物

として知っている方も多くいると思います。

 

資料を読んだところ、使用されている紙質は多様で、楮でも

短い繊維や長い繊維があったり、苧麻や雁皮と楮の混合などが

あるとのこと。

印刷方法に関しても、様々な議論があったようですが、

「近年の研究では、複写方法は押捺ではなく刷りで、原盤は金属版

である可能性が高いことが指摘されている」

(引用『古典籍古文書料紙事典』より)

 

印刷の歴史を調べると必ず出てくるものですが、

あらためて、いろいろな説があったことを知りました。

研究って、いろいろなことに興味を持って、調べ続けること

が大事なんだと改めて思いました。

と話したら、「遊び心がないと続かないよ」と言われて

しまいました。

ご本人たちは「遊び人」と自分たちを呼んでいました(笑)

 

ちなみに、この試し刷りを保管しようと思い、

ポリエステルフィルムに挟みました。

このポリエステルフィルムに挟む方法は、

名フィルム・エンキャプシュレーションといい、

資料の取り扱いに不安がある時にポリエステルフィルムで

両面から挟み、封入する方法です。

フィルムに挟んでいるため、扱いやすくなるという保存方法の1つ。

酸性劣化の激しい資料を脱酸性化処置を行わずに封入するのは

より劣化が進む危険性があるのでやめたほうが良いなど、

資料の種類、劣化の程度によって注意が必要ですが、

必要な処置をおこなえば、資料の取り扱いがしやすくなります。