Diario di Carta-Studio 小さな工房の日記

日々の出来事、作品作り、美術品修復に関することなどを綴ります

「江戸絵画お絵かき教室」展(府中市美術館)に行ってきました②

府中市美術館で開催中の「江戸絵画お絵かき教室」展の感想の続きです。

テーマ

3 江戸時代の画家はどうやって学んだのか

4 江戸絵画はヒントの宝庫

 

 江戸時代の画家はどうやって学んだのかをテーマに、中国に学ぶ、

雪舟に学ぶ、粉本に学ぶ・粉本を作る、オランダ本に学ぶ、応挙に学ぶ

という5つの内容に合わせて展示が行われていました。

 中でも粉本を作るは、とても勉強になりました。語源は諸説あるようですが、

基本の絵を描いておくノート、解説にはネタのようなものと書かれていましたが、

いつ依頼があってもすぐにそれをもとに描けるように準備しておく。これは絵を

描くことだけでなく、仕事に通じるものがあると思います。何もないところから

生み出すことは難しく、けれどもヒントがあればアイデアも浮かびやすくなる。

基本の技術を記しておけばそれを参考に処置を考えられる。もちろん慣れてくれば

その手本を見る必要もなくなるかもしれないし、新しい内容をまた書き記すことも

あるかもしれません。流派に属している画家はまたその流派の画風を学ぶ際にも必

要とされる教科書のようなものかもしれません。また海外から学ぶ、過去から学ぶ

ということは、新しいものを学ぶことであり、古きから新しきを学ぶことでもあり

ます。絵画技術を学ぶということだけでなく、学ぶことから得られるものはいつの

時代でも同じなのだと理解できます。

 最後は江戸絵画はヒントの宝庫をテーマにした展示です。

 ここではユニークな描き方やこれまでに描かれていなかったことに着目した作品

が展示されていました。縦長の画面にゾウを描くがゾウは全部が描かれず、顔と背が

一部描かれているなど見切れさせている作品が展示されていました。一部だけを描く

ことにより、大きいものがより大きく感じられ、長いものはより長く見せる効果が生

まれています。

 空を描くことに魅せられた司馬江漢の作品が展示されていました。司馬江漢は油絵

の技法で描いている。江戸時代の油絵の具の作り方も解説されていて、亜欧堂田善の

方法を再現実験した報告パネルも展示されていた。

 今回の展覧会は、絵の描き方を学ぶ方法を様々な方向から解説したものだったよう

に思います。基本を学び、新しい情報を手にしながら、最終的には自由に描けるように

なることが絵を描く楽しさなのだと教えてくれたような気がします。

 私は絵を観るのが好きな描けない人ですが、下手だから描かないと思い込まず

ちょっと描いてみようかなと思わせてもらえた展覧会でした。

 このように感じる人のためだと思いますが、すべての展示を見た後、絵を描くスペース

とペンのセットが用意されていました。

 絵を描くことが苦手だと思っている人や絵の描き方に迷いがある人は、この展覧会から

何かひらめくものがあるかもしれません。もちろん、江戸絵画に興味のある方も若冲

応挙、蘆雪の作品が並んでいるので見ごたえがあります。前期後期で展示替えもあるので、

もう一度見に行こうと思います。

 

府中市美術館は府中の森公園の中にあり、桜並木がある公園のため、散歩にも最適です。

 

「春の江戸絵画まつり 江戸絵画 お絵かき教室 描くって楽しい。」

 

展示期間

前期 3月11日~4月9日

後期 4月11日~5月7日

休館日 月曜日

開館時間 10時~17時(入場は16時半まで)