先週一つ仕事を終え、今週は急ぎではない仕事と
大学の講義を行いました。
本の綴じ直し
綴じ糸が切れてページが外れてしまった本の
修復をしています。
綴じができるように、折丁の修復もしています。
こよりの処置
(アルカリ性の水溶液に漬けています)
これまで和紙を使って自分でこよりを作っていたのですが
↑ 自作こより
必要な数が多くなり、すべて自分で作るのも大変になったので、
紙製のこよりを購入しました。
このまま使用できるのですが、念のためpHを測って
みました。
簡易な方法で測ったので、酸性かアルカリ性かが
分かるだけの測定方法です。
アルカリ性でした。
紙の劣化要因に紙の酸化と酸性化があげられます。
酸化というのは、空気中の酸素とセルロース(紙の主成分)
が徐々に化合して長い間に変質・分解を起こすことをいいます。
酸化の過程にはいくつがあるのですが、最終的に
セルロース分子内にカルボキシル基を生じ酸性化してしまいます。
そのため、作られた直後の紙が中性であっても、時間が経つと酸性化する
ことがあります。
酸による劣化は、紙の中に含まれる酸性物質が原因で紙を傷めます。
そのため、酸性の紙よりも中性の紙や弱アルカリ性の紙の方が長く
保存できると考えれています。
今回購入したこよりはアルカリ性だったので、現時点では
酸性物質は含まれていないと思われますが、
前述したように、今後酸性化していく可能性もあるので
念のため、アルカリ性の水溶液に浸しておきました。
かるーいアルカリ化処置です。
これで完全に劣化を防げるというわけではありませんが、
予防処置として行いました。
今週の大学での授業
テーマは「裏打ち」
裏打ちは、弱ってしまった資料(作品)に裏から
和紙を接着し、補強することなのですが
修復だけの技術ではありません。もともとは、
表装の技術で、和紙に描かれた作品を仕立てる時に
行われていました。そうした技術が修復分野にも
使われています。
初めて裏打ちを行う学生さんもいたので、今回は
傷んだ資料ではなく、損傷のない料紙を使用して
裏打ちの実習を行いました。
位置合わせや糊が付いた和紙を持ち上げるのが難しい、と
言いながらも楽しそうにやっていたのを見て、対面授業が
出来るようになってよかった、と思ってしまいました。
今年度の授業もこのまま実習が行えるといいなと思いつつ
健康に気をつけ必要な時以外の外出は控えようとより強く
思いました。
こんな12月2週目でした。
来週は何をしようかな。