Diario di Carta-Studio 小さな工房の日記

日々の出来事、作品作り、美術品修復に関することなどを綴ります

12月2週目のお仕事いろいろ(本を綴じたり裏うちしたり)

先週一つ仕事を終え、今週は急ぎではない仕事と

大学の講義を行いました。

 

本の綴じ直し

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綴じ糸が切れてページが外れてしまった本の
修復をしています。

綴じができるように、折丁の修復もしています。

 

こよりの処置

アルカリ性の水溶液に漬けています)

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これまで和紙を使って自分でこよりを作っていたのですが

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     ↑ 自作こより

必要な数が多くなり、すべて自分で作るのも大変になったので、

紙製のこよりを購入しました。

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このまま使用できるのですが、念のためpHを測って

みました。

簡易な方法で測ったので、酸性かアルカリ性かが

分かるだけの測定方法です。

アルカリ性でした。

紙の劣化要因に紙の酸化と酸性化があげられます。

酸化というのは、空気中の酸素とセルロース(紙の主成分)

が徐々に化合して長い間に変質・分解を起こすことをいいます。

酸化の過程にはいくつがあるのですが、最終的に

セルロース分子内にカルボキシル基を生じ酸性化してしまいます。

そのため、作られた直後の紙が中性であっても、時間が経つと酸性化する

ことがあります。

酸による劣化は、紙の中に含まれる酸性物質が原因で紙を傷めます。

そのため、酸性の紙よりも中性の紙や弱アルカリ性の紙の方が長く

保存できると考えれています。

今回購入したこよりはアルカリ性だったので、現時点では

酸性物質は含まれていないと思われますが、

前述したように、今後酸性化していく可能性もあるので

念のため、アルカリ性の水溶液に浸しておきました。

かるーいアルカリ化処置です。

これで完全に劣化を防げるというわけではありませんが、

予防処置として行いました。

 

 

今週の大学での授業

テーマは「裏打ち」

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裏打ちは、弱ってしまった資料(作品)に裏から

和紙を接着し、補強することなのですが

修復だけの技術ではありません。もともとは、

表装の技術で、和紙に描かれた作品を仕立てる時に

行われていました。そうした技術が修復分野にも

使われています。

初めて裏打ちを行う学生さんもいたので、今回は

傷んだ資料ではなく、損傷のない料紙を使用して

裏打ちの実習を行いました。

位置合わせや糊が付いた和紙を持ち上げるのが難しい、と

言いながらも楽しそうにやっていたのを見て、対面授業が

出来るようになってよかった、と思ってしまいました。

 

今年度の授業もこのまま実習が行えるといいなと思いつつ

健康に気をつけ必要な時以外の外出は控えようとより強く

思いました。

 

こんな12月2週目でした。

来週は何をしようかな。