Diario di Carta-Studio 小さな工房の日記

日々の出来事、作品作り、美術品修復に関することなどを綴ります

版画の見かた

雨が続いて、どうも調子が上がりません。

雨もないと困りますが、続くとどうも体が重くなります。

 

さて、ここのところは作業場でできる仕事なので

お出かけはあまりありません。

出張作業はないけれど、授業はありますので

作業をしつつ、授業の準備をしています。

 

前回、西洋版画に見られる略語についての授業をしたので

ちょっとだけお話します。

 

これは、数年前に古本屋で購入した版画

枠線の外側に文字があります。

左側には

E.D.Smith del.

右側には

S.Watts Sculp.

と書かれています。

ここで、気にする箇所は

del. と Sculp.です。

 

「del」は、Delineavitの略で del. とか delin.と

書かれることもあります。

これは、「~が素描した」という意味で

素描をもとに彫るときに使われる言葉です。

ここでは、「E.D.Smithが素描した」となります。

そして、

「Sculp.」は、Sculpsitの略で sc. とか sculp.と

書かれることもあります。

「~が彫版した」という意味で、彫り師に使われる

一般的な言葉になります。

ここでは、「S.Wattが彫版した」となります。

 

ちなみに

E.D.Smithさんは、エドワード・ダルトン・スミスさんという

ボタニカルアーティストでした。

 

S.Wattsさんは、ウィリアム・ワッツさんという彫り師さん。

 

ここからさらに調べると

この資料は

"The Botanic Garden" という1825年に出版された

書籍の一枚(一葉)だったようです。

 

この2つ以外にも版画に記された文字がありますので、

版画を見る際には、絵(イメージ)だけでなく、

文字にも注目してみてください。