Diario di Carta-Studio 小さな工房の日記

日々の出来事、作品作り、美術品修復に関することなどを綴ります

西欧中世の書物の製本モデルを作る①綴じSewing

今年度チャレンジしていること、

「西欧中世の書物の製本モデルを作る」

こと。

 

毎年何かテーマを決めて調べたり、作ったり

しようと思うものの、なかなか実行できていなかった

のですが、今年こそは!とチャレンジ中です。

 

参考にしている主な書籍は以下の3冊

Carlo federici, La legatura medievale, 1993

Jane Greenfield, ABC of Bookbinding, 1998

J.A.Szirmai, The Archaeology of Medieval Bookbinding, 1999

 

この3冊を読みつつ、調べつつ、製本モデルの作成を

しています。

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左の2本は、ヘリンボーン綴じ(herringbone sewing )

右の2本は、本綴じ(総かがり)…この呼び方でいいと思うのですが…

(double cord- packed straight sewing, single cord-single straight

sewing)

 

今は15世紀の書物の製本構造を制作しているのですが、

綴じ方も折丁ごとに糸をからげている方法(single sewing)

と、綴じの支持体が見えなくなるようにからげる方法

(packed sewing)があります。

ということで、ヘリンボーン綴じのサンプルでは、2つの

方法で綴じています。

 

綴じの支持体(綴じの芯のようなもの)を使用し、

綴じ糸をこの支持体にからげながら綴じる方法は、

書物を作るときによく使われていた方法です。

支持体の種類は、みょうばんでなめした革ひもや、

麻ひもが使われることが多かったようです。

中世と一括りにしていますが、年代や地域によって

違いもあります。

それらを調べつつ、制作にチャレンジ中です。

 

20年近く前に綴じ見本ということで作ったことが

あるのですが、当時はただ綴じ方を知るだけで

精一杯で、いつ頃どこでなどは考えることもなく

ただ綴じていました。

久しぶりのヘリンボーン綴じ

綴じ方を忘れていて、資料を見直し、サンプルを見直し

なんとか綴じられました。

写真は、20年前のサンプル。頑張ってました。

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本文紙について省略してしまいましたが、西欧に

製紙技術は12世紀頃イベリア半島からヨーロッパに

伝わっていきました。

それ以前に使用されていたのはパーチメント(羊皮紙)

でした。

ちなみに、羊皮紙と言っていますが、羊以外の皮も

使っているので、獣皮紙というのが正しいのかもしれません。

なじみがなさすぎですけど。

呼び方を含め、羊皮紙の様々なことを書いている本が

最近出版されました。

 

羊皮紙のすべて

 八木健治『羊皮紙のすべて』青土社、2021

 

表紙と見返し紙に「羊皮紙」という名の紙を使用しているのも

さすがです。

読書中ですが、私の先生や知人の資料が参考文献に出ていると

うれしくもあり、自分も頑張らないとなあという気持ちに

させられます。